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「読みきり短編」
【30のお題】シリーズ

1.居場所もしくは存在意義(30のお題)-10

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 船のロイヤルスル(一番上の帆)まであろうかという巨大な水の柱。 螺旋にうねり、竜巻にも似ているが、その先には明らかに知性を感じさせる一対の目。
「じぃさんっ!!」
 ヴィーラが止めるよりも早く、カーラアブルが声も枯れそうなほどの叫び声をあげて師マギの元へと走り出した。どうやって対抗するのか、どうやって身を守るのかという冷静さは微塵もない。それでも彼から見れば、老人は自分が守られるよりも守るべき存在だった。誰もが自分を大人とは扱わないが、それでも肉体的にはもう師マギを守らねばならないことを知っている。
 理屈ではない。
 老人だからでもない。
 カーラアブルにとっては何にも代えがたい家族だ。それを守ろうとする気持ちに躊躇いはない。
 カーラアブルの声に、水の柱が身じろぐように、ゆら……と動いた。雨とは別に大量の水が降り注ぐように見えたが、それらが師マギを濡らさない不思議。
 空から海へと突き刺さる稲光が師マギの横顔を照らす。青白い光のせいだけでなく、明らかに彼はひどく具合が悪そうだが、その目は激戦を戦い抜く軍隊を導く将軍のように力強い。
 足元には、さきほどセフィードが持ってきた契約の書が入っていたらしい箱の蓋だけが放り出されて雨に打たれていた。
 カーラアブルの声には振り向きもせず、視線を水柱から反らさない。
「オディールの守護者にして、旧き神々における三位の御方の尊き眷属よ、水に棲む者を統べる御方のお慈悲により、ささやかなる守護を得た我らに力をお貸しいただきたく願い奉らん」
 カーラアブルは師マギのそばに辿り着いたものの、次にどうすればいいのかわからず、老人の厳しい横顔と初めて目にする巨大な水妖を交互に見ることしかできない。
 魔術で声を増幅しているのか、師マギの声は波も雷の音もつらぬき、野外の劇場で演じているかのように朗々と響き渡る。
 その水柱は軋むような音で応じてきた。人語を操ることが苦手なものが発する人の言葉というのに相応しい声だ。その声も耳からというよりは頭の中に直接響いているように感じられるほど、周囲の雑音を凌駕している。カーラアブルはまさにそれをいま耳にしていた
「我らはオディールの守護ではない。こうべを垂れるあるじの契約のしるしを汝らが持つゆえ、つたなく耳障りな呼びかけに応えはしたが、汝らが難儀しておる理由がなんであれ、我らには――」
 そこで言葉は途切れ、瞬きをひとつするあいだに水の柱だったモノが見る間に水竜の姿に変わったかと思うと、その顎門を大きく開いて大気を震わせる咆哮を上げこちらへ突っ込んできた。
 カーラアブルが師マギの体を守るように甲板へと倒したが、水竜は彼らの頭上を越えて、その背後へと身をくねらせる。
 カーラアブルの耳に、先刻、船倉で聞いた鳥のさえずりのような声があふれ、思わず両手を耳に押し当てた。
 ヴィーラが手にしていたセフィードの血を吸ったサッシュをサーベルのように鋭く伸びた牙にかけて奪い、勢いでヴィーラは転倒し片方の剣を手放す。紅蓮の光を放っていた剣は、甲板をこする音を立ててくるくると廻りながら、カーラアブルのそばで止まった。
 その場にいた全員が眼前の光景にただ呆然と見入る。
 水竜の顎が閉じられ、人間では決して砕けぬものが砕かれた。怨嗟と呪詛に染められた魂が悲痛な叫びを上げるとすればこんな音なのだろう。おぞましい嫌悪感と恐怖が耳障りな音を立てて魂を引っかく。
 誰もが背筋に冷たいものを感じ、誰もができるならば二度と聞かずに済ませたいと思うような絶叫が砕け散る音だった。
 それは漂流船が現れて以来、いくつも漂ってきては目に見えぬ何かに弾かれていた鬼火だった。
 先ほどまでの人の頭ぐらいのものではなく、水竜の口の大きさに相応しい、大人の両手を広げたほどのものに膨れあがっており、船を守る何かに弾かれることなくヴィーラを狙っていたのだ。そして誰もが目の前の水妖に気をとられて意識していなかった。
 水竜は血まみれのサッシュを牙に引っかけたまま船の上を飛び跨ぎ、そのまま漂流船へと放たれた矢の勢いで突っ込んでいく。
「いったい……なにが」
 ヴィーラがいち早く体勢を立て直して、倒れたままのカーラアブルと師マギに手を貸すためにそばへ駆け寄った。
「なんというタイミングじゃ……入れ知恵はマジュヌーンか」
 師マギは身を起こすと、緊張を解いたように大きなため息を苦しげに吐いた。先ほどの大将軍のような威厳は影を潜め、激しい雨に髪も服も濡れそぼった老人がいるだけだ。
「わしかヴィーラの血で契約をしようと思っていたのじゃが、あれは誰の?」
「ルシャーティが怪我をしたんだ……頭を打った」
 カーラアブルはセフィードの通名を呼べるぐらいには落ち着いたようだったが、表情はなんとも心細げで自分に責任があるというように唇を噛んだ。ヴィーラが言葉を継ぐ。
「マジュヌーンが診ています。そして彼の血を浸み込ませて貴方に渡せと」
「船が!」
 甲板に残っていた者たちが次々と起こる衝撃に動揺しながらも、水竜が飛びかかった漂流船を指差した。
 船が鬼火で蒼く燃え上がっている。実際は、マストに巻きついた水竜と海中から次々と襲い来る水妖に抗う鬼火だ。
 まるで漆喰が剥がれ落ちるように、鬼火の数が減るごとに立派だった商船の素顔が現れる。帆は破れ、マストは折れ、朔具はぼろぼろに垂れ下がっている。
 抗う鬼火の一つが、船を離れて再びこちらへと向かってきた。

 今度こそ無防備だ。

「アレは、新たな命を仲間にしようと求めておる。死の世界へと引き込めるだけの弱った命を求めてな」
「それはつまり――」
 ヴィーラが名指しするのを躊躇ったが、師マギは頷いた。
「わしのような老人か、大怪我をしたというルシャーティじゃ。わしは惜しい命ではないが、ルシャーティはやれぬのう。だが……」
「どちらも渡すわけないだろっ! 情けないコト言ってどうするんだよ!」
 カーラアブルが怒りに満ちた語気で吐き捨てると、自分のそばに落ちていたヴィーラの剣を乱暴に取って頭上に振り上げた。
「待て! カーラアブル!」
 ヴィーラと師マギが同時に制止する。
 カーラアブルは殆ど勢いで手にした剣の重みに驚いていた。ヴィーラはこれほどの重さのある剣を、細身の剣でも振り回す優雅さで操るのだ。しかも二本の剣を。自分では両手で支え持っても動きがおぼつかない。
 だがいまさら手放す選択肢はなかった。
 師マギが何か叫んでいる。
 ヴィーラも止めようとこちらに手を伸ばしている。
 どちらも水中を通してみているように緩慢で、音がない。
 いや、音がないのではない。耳に聞こえるのは鳥の囀りのみ。
 ぎらり、と剣が反応する。
 熱のない鮮紅の炎が刀身から生み出され、その炎がみるみるカーラアブルの手から肩へ、そして胴から足へと舐めるように駆け下りていく。
 熱くないどころか力が注ぎ込まれ、剣の重さも得体の知れないものへの恐怖も、セフィードの怪我の不安も溶けていくようだ。そして高揚感がカーラアブルを突き動かす。
 あの忌まわしいものを斬ってやれ、と。
「望むところだ、ラハブ!」
 その時、耳と腹に衝撃を与える轟音と共にひときわ近いところへ雷が落ち、それが鬨の声であるようにカーラアブルは剣を振り上げたまま走り出した。
 刀身に熱のない炎が集まり、いっそう輝きを帯びる。いますぐ放ってくれといわんばかりだ。
 しかし二歩も進む前に剣を振り上げた腕をそのまま掴んで捻り上げられ、肩の激痛であっけなく剣を落とした。
 同時に鬼火は、船尾のほうからの銃声で砕け散る。先ほどの砲撃では一矢も報えなかったが、砲撃手のカスールが得意の銃にこめた特殊な弾丸を命中させたようだ。
 その成果に、船尾に身を隠している連中から喝采が起こったが、竜型の小さな水妖が獲物を横取りされたと言わんばかりに空中でくるりと弧を描いて、小さな威嚇の声をあげたことで一気に静まった。
 カーラアブルは、生まれてこのかた一度も上げたことのないような絶叫をあげてもがき、まだ自由の残っている両足で自分の両手を掴んでいる相手を無茶苦茶に蹴り上げる。
「離せよっ! オレは戦うんだっ」
 だがさらにこめかみにぴたりと押し当てられた指先のせいで、突然まるで全身の力が入らなくなり、呆然とする。
 魔術だ。自分の力の流れが遮断されたかのように、まったく手足に力が入らない。
 殺意に近い怒りで指の主を見ると、師マギが哀れむような表情でカーラアブルを見つめていた。
「話は最後まで聞くものじゃ、カーラ。誰が諦めたなどと言ったか。そのような惰弱な性根では、お前たちをここまで育てられぬわい。ヴィーラたちのような身を護るすべはなくとも、わしにはまだここがある」
 そういってカーラアブルのこめかみに押し当てていた指先を離し、自分の頭を指差した。
 カーラアブルの四肢に感覚が戻ったがもう暴れなかったので、彼の両手を兎の耳を掴むかのように縛めていたヴィーラも手を放してやった。
 カーラアブルは緊張の糸が切れたようにずるずるとその場に座り込み、ひねり上げられた肩の関節を揉みながら、不機嫌な表情で師マギに話の続きを促す。
「呼び出した水妖は、血に目がくらんで自分のものにしてしまった。竜と水に棲むものを統べるオディールの城主と我々の契約により、アレは血を通じで関わってしまったのじゃ。おかげで交渉をする手間が省けたがな。
 ゆえにあの船の鬼火たちがわしらに害をなすものなら、奴は不本意ながら全力で阻止せねばならんのじゃよ。ましてや血で購ったセフィードが死ぬようなことはな」
「それに術で穢されているとはいえ、魂を飽きるほど喰らえる機会もあまりないだろうな」
 ヴィーラが言葉を継ぎ、カーラアブルが落とした剣を自分の背の鞘に戻す。まだ赤く光っていたが、今にも弾けそうなほどの昂ぶりはなく、カーラアブルの耳に聴こえる囀りのような音も息を潜めている。ヴィーラの背に戻った剣を眺めながら、自分を包んだ炎と流れ込んできた奔流を思い返した。魔法剣というものは、認めた使い手に力を貸すと言うが、自分はあの一瞬、相応しいと思われたのだろうかと右のてのひらに目を落とす。
 そしてあの奔流をいつも手なずけて戦えるヴィーラの強さに、改めて感服した。狂戦士のような意識に引き上げられ、それでも冷静さを失わないなどどれほどの精神力なのか。
「あれはルシャーティの血だ。代償になにか取られたりしないのか?」
 カーラアブルは心配げに問うと、命が失せた漂流船がゆっくりと傾き始めたのを見てとりあえずの安堵で息を吐いた。
「奴がなすことの代償が血じゃ。永続的な契約ではない。わしのやり方には騙されたようで恨めしく思っておろうがの。
 あの船を操る術士は別の場所だろうから、根源を絶ったとは言えぬが、まあ現状では最良の結果じゃ。オディールに着いた暁には、城主どのに何か献上せねばな」
「そうか……」
 雨の激しさがゆっくりと弱まり、それと共に漂流船との距離も確実に離れていく。すでにこちらに向かってくる鬼火はない。

 甲板を叩く雨音もうねる波も静かになり、船の進む先の空も明るくなってきたせいか、昇降口の跳ね上げ戸が開き、厨房長のアルクダが頭を出した。
 ゾラの通名の熊を意味する名に相応しい体躯を、驚くほど身軽に押し上げてあたりを見回す。
「ルシャーティの怪我は見た目ほど悪くなさそうですよ。最悪の時は過ぎましたかな、師マギよ」
 その報告にカーラアブルの表情がぱっと明るくなり、ヴィーラと視線を交わして頷きあった。そしていてもたってもいられぬ様子で、アルクダの傍らをすり抜けて下へと降りていく。
「おお、それは良かったのう。こちらはご覧のとおりじゃ」
 老人はそういうと手振りで取り残されて遠ざかる漂流船を――いまや沈没しかかっている船を示した。
「おお、あんな姿にならずに良かった。お骨折りにみな感謝しておりますぞ」
 アルクダは大げさに身震いしてみせると、散々な甲板の上を見回した。
「水中からも攻撃を受けていたので、これから総出で点検ですな。最下層にはもう船匠らが行きましたが」
「さすがにそこまで老人を酷使せぬじゃろう? わしはもうオディールに着くまでは目を覚まさぬつもりで眠るから邪魔をするなよ」
 師マギは苦笑交じりにそういうと、アルクダは眉を上げて頭を横に振る。
「いやいや、俺のメシは召し上がってくださいよ。今日はとびきりのものをご用意しますからね」
「俺はとびきりの酒がいいな。薄めてないという意味で」
 横からヴィーラが茶化す。
「もちろん心得ておりますとも、お二方!」
 アルクダは芝居がかった一礼をすると、総出の点検に加わるべく下へと戻って行った。
 疲労と安堵の深々とした溜息を耳にし、ヴィーラが師マギに手を貸す。
「お許しいただけるなら、担いでお部屋にお送りしますが?」
 にやりと笑って言うヴィーラに、師マギは軽く杖の先で小突く。そしてゆっくりと足元を確かめるように歩みを進めながら
「水妖が応えてくれるか定かではなかった。さらにはその水妖がアレと戦えるほどの強いものかもわからなかったが、やはりわしらは悪運が強いのう」
 と、独り言のように呟いた。
「陛下も……、否、アグラージュもよくおっしゃられたのは、すべてに理由があると。我らがいまオディールに向かっているのも、そのために城主の契約書を持っていたのも、この海での難をやり過ごすゆえのことかと」
 ヴィーラは久しく言葉に乗せていなかった名前を口にして、複雑な表情をした。
 故国の王。本名ではなくゾラの通名でしか呼べぬ王。
 少年時代を共にすごし、成人してからは共に戦い、共に酒を酌み交わし、共に笑いあった親友だ。迷いなく命を賭けられる主君であったにもかかわらず、アグラージュはそれを禁じた。
 抗えぬ重責を乗せて、禁じたのだ。それを思うと、今も裏切られたような救われたような、怒りたいのか悲しみたいのかわからない感情に囚われる。
 十年以上経つが、少しも拭えない。
「あのタイミングで、セフィードが負傷したこともな――」
 師マギの言葉に我に返る。
「おそらくは」
「ではカーラアブルがお前の剣を手にしたことにも、故があるのだろうな」
「俺は予知するものではないのでわかりませんが、未来に必ずや」
「それが吉となる未来を紡がねばな」
 師マギはゾラたちが好む、未来への祈りにも似た言葉を呟くと、修理や掃除に活気を取り戻した仲間たちを眺めながら下へと降りた。

【続】



【あとがき】


あと1回で終わるかなー、どうかなーというところです^^;
今回はキリのいいところまで掲載したので、長めですみません。
現在35000字。4万までに収めたいッ。

前回、今回と、テンション上げるために延々と「パイレーツオブカリビアン」のサントラを聞いて書いておりました。
脳内再生しながら読むと、楽しんでいただけるかもしれません(笑)

結構ながしで書いているので、完結したら冒頭から読み直して直さねば、です;

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~ Comment ~

NoTitle

水妖を騙して契約させるマギの知恵が冴えた展開で面白かったです。
でもまだまだカーラの秘密も解らないですね。
少しずつ覆われていた部分が剥がれて、カーラ、セフィード、マギ、ヴィーラがいったい何者なのか。
すっかり真相が判ってくると、またお話が一段と面白くなると思います。続きが待ち遠しいです。

のえる さま>

コメントありがとうございます。

1回か2回の読みきのつもりで書き始めた本作、もう少しで中篇に足を突っ込む長さになります^^;
自分の超いい加減な見込みのせいですw

設定とか情報を、できるだけ気にとめて読んでもらいたいと思って書いてるので、なかなか小出しになってしまってるんですが、まあのえる姐さんは殆ど知ってるじゃないですかww

次作はさらに少し時代を遡って書きたいかも。――かも。
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