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「読みきり短編」
【30のお題】シリーズ

1.居場所もしくは存在意義(30のお題)-9

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「邪悪には邪道で対抗してみるかのう。セフィード、オディールの契約の羊皮紙をここへ」
 カーラアブルが操舵室へ取り次がずとも、すぐにセフィードが螺鈿細工を施した黒檀の箱を抱えて梯子を上がった。
 ワインのボトルが一本入るほどの横長の美しい木箱で、向かい合った二羽の黒鳥と、城主であり旧神であるといわれている竜の紋章を描いた札が、封印のように鍵穴のある場所に貼られている。
「お持ちしました。なにを……?」
 セフィードが訝しげに尋ねると、師マギは箱を受け取り「水妖を召喚する」と短く答えた。
「新月にはまだ早いですし、ましてやオディールの海域でもありません。潮流、月齢、時刻を計算して、最良のタイミングを出してありますが、それは今ではない。そしてそのときが一番危険が小さいのです」
「それは二日後か? それとも三日後か? それまでわしらが生きていたらいいのじゃがな。あれに取り込まれたら、下船はできぬぞ」
「しかし……」
 セフィードが言葉を継げずにいると、燐光のいくつかがマストを離れ、こちらへと向かってくる。火を噴くわけでもなく恐ろしい音がするわけでもないが、正体がわからないものが自分たちに何をしかけてくるかもわからないのが漠然とした恐怖になって思考を縛る。
 それを目で追っていたマジュヌーンとヴィーラが「同感です」と師マギを支持した。
「手をこまねいているよりは、危険であっても可能性に賭けた方がいい」
「ではマジュヌーンとヴィーラはわしと。他のものは警戒を怠らず持ち場について待機させよ」
「俺は?」
 カーラアブルが口を挟む。
「お前はセフィードと操舵室へ行くのじゃ。そして昇降口は閉めるのを忘れんようにな。水浸しの寝台はまっぴらじゃ」
「三人だけを危険な目に晒すなんて、とうてい黙って聞けないぞ!」
 師マギの言葉にカーラアブルは案の定食ってかかったが、ヴィーラが冷静に有無を言わさぬ口調で返した。
「ではカーラ、お前に何ができる? アレを祓えるか? それとも魔族と交渉できるか? のんびり口論している暇はない」
 悔しそうな表情を隠さないカーラアブルの肩を、セフィードがそっと掴んで下へと促す。

 こちらに向かっていた燐光は、最初にマストの上に光っていたものと同じように耳障りな金属音を発して、何かにぶつかったように砕け散る。さすがにその様子を見て、三人は希望とも呼べぬほど小さな光を感じた。
「なにかに妨げられている……?」
 砕けて暗い海に消えていく燐光を目で追いながら、師マギとマジュヌーンにその可能性を尋ねるように語尾を上げた。
「わからぬ。この船には邪悪から身を護るような術はないのじゃ」
「アレが目覚めるのが近いとか?」
 マジュヌーンがことさら声を落として、視線をちらりと船倉へと降りる昇降口へとやる。師マギもヴィーラは難しい表情で沈黙を返答とした。
 と、その時、船底に強い衝撃をうけて、甲板にいる全員が転倒しそうなほどバランスを崩し、師マギはヴィーラとマジュヌーンに両脇から支えられてようやく踏みとどまった。
「やれやれ、水中からも来ておるのか。とりあえず、今の最善を尽くすのみじゃ」
 師マギがすでにずぶ濡れで先ほどの疲れも癒えてない顔を毅然と上げ、右舷の舷縁に歩み寄ったそのとき、カーラアブルたちが降りていった昇降口からの叫び声が聞こえた。

 雷雨の騒音を貫いて三人の耳に届くということは、尋常ならざることが起こったに違いない。

 ヴィーラはマジュヌーンに師マギを委ねると、傾ぐ足元をものともせずに昇降口へと駆け寄り、閉ざすようにといった跳ね上げの扉を勢いよく開いた。
「カーラ! セフィード!」
 はっきりと見通せない暗さをもどかしく思いながら、二人の返事を待つ。
「マハヴィル、セフィードが!」
 カーラアブルの緊張して上ずった声が、助けを求めるように叫び返された。彼がセフィードの通名のルシャーティではなく、本名で呼ぶのはよほどのことだ。
 それでもヴィーラはカーラアブルが無事であることへの安堵した気持ちを感じずにはおれない。カーラアブルに落ち着け、と言いながら階段を降りかけ、目が慣れたところで人の輪の中心を見て言葉を失った。そしてすぐに身を翻し、甲板に残っているマジュヌーンの名を叫ぶ。
いま船が置かれている状況も一刻を争うが、間違いなく階下に倒れているセフィードにも助けがいる。

 再び体の中を揺さぶるような振動が船全体をつらぬき、その場にいた誰もがさらに動揺した様子で手近なもので身を支えた。
「オレが……、さっきの強い揺れで階段を踏み外したんだ。下にいたセフィードが支えてくれたんだけど……」
 カーラアブルの声がひどく震えている。
 セフィードはカーラアブルを助ける形でその身を支え、自らは足を踏み外して受身を取れることなく後頭部をしたたかに打ちつけたようだ。彼の長い金の髪の周りにはどす黒い水溜りができており、もちろん本人には意識がない。
頭を打ったときは動かしてはいけないと、怪我の多い生活で学んだことを心得ているとはいえ、ではどうすればいいのかとカーラアブルは途方に暮れているようだ。
 すぐに白い影がふわりと昇降口に現れ、驚くほど滑らかに素早い身のこなしで怪我人のそばに下りてくると、この場にそぐわないほど白い服が汚れるのも構わずに、血溜りのかたわらに跪いた。そして手首を取って脈を確かめ、口に指を差し込んで呼吸がつまっていないか確認すると、カーラアブルにサッシュとして巻いている布を寄こすように言った。
 包帯にでもするのだろうかと、カーラアブルは急ぐあまりにおぼつかない手でほどいたサッシュをマジュヌーンに手渡すと、驚くべきことに彼はそれで血溜りをぬぐって、布に血を染み込ませている。
「マジュヌーン?」
 その場にいた誰もが彼の行動に不安げな視線をむけ、カーラアブルも理解できぬ戸惑いと不安を隠さない。
「ヴィーラ、これを師マギに渡してください。カーラを連れて」
「いったいなにを?」
 血で重くなったサッシュを受け取りながら、ヴィーラですらマジュヌーンの意図を量りかねている様子だ。
「説明ならあとでいくらでもできます。皆が生きていたらね。お願いですから急いでください」
 口調こそ荒げはしなかったが、いつもにないマジュヌーンの様子にヴィーラは頷いた。安全のために船倉へ行かせたはずのカーラアブルを、また外に出せというのだ。特別な理由があるのだろう。

それを確かめるのは今ではない、とヴィーラは今までの人生で学んでいた。

 時に戦士は疑問を質す前に動かなければならないのだ。

「いやだ、オレはセフィードのそばにいる!」
 自分をかばってくれたためにひどい怪我を負い気を失っている、兄弟同然の存在が目の前にいるなら至極まっとうな反応だった。心配よりもこのまま目を覚まさないのではないかという恐怖だ。
「カーラ、彼を助けたいならなおさらです」
 マジュヌーンの言葉に、言葉を失って瞠目する。どうして、と聞く前にヴィーラに抱え上げられ、甲板に押し出された。
「セフィード!」
「マジュヌーンを信じろ、カーラ。お前にはお前の役割がある」
 なおも下へと戻りたがるカーラアブルに、ヴィーラは叱責ではない言い聞かせるような声音でつぶやき、それは不安と恐怖で落ち着きを失っている相手を黙らせる効果があった。

 いやむしろ、目の前に現れたものに一瞬すべてを忘れたのだ。

 視界は荒れた波のせいで船が翻弄されているので、つねに傾いでいる。
 低く重そうに下がった雲からは雷光が海へとおち、得体の知れない立派な商船はますます近くに見える。


 しかしそんなものよりも、師マギが見上げているもののほうが衝撃が大きかった。
【続】




【あとがき】


この話も今回で3万字を越えたあたりです。
思いのほか長くなってますが、あと一息と自分に言い聞かせながら(笑)

今回はちょっと動的シーンが多いので、何度か時間をおいて手を入れました。
縦書きにして見直したかったのですが、塩梅のいいものがなくて^^;

こういうシーンはヘタに間をあけず、勢いあるうちに先を書いてしまいたいと思ってますw
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