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「読みきり短編」
【30のお題】シリーズ

1.居場所もしくは存在意義(30のお題)-8

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「ヴィーラ、上!」
 甲板にいた全員の視線がメインマストの上に注がれる。
 激しい雨に煙るメインマストの上に、明らかに雷ではない薄青い光が揺らめいている。
 ヴィーラの判断と行動は一瞬で、傍らにいたカーラアブルを肩に担ぎ上げると、殆ど滑り降りるように甲板に降り立った。
 ヴィーラの剣の柄が腹に食いこんだらしいカーラアブルはカエルのような声と猛烈な抗議の声を上げたが、ヴィーラは一顧だにせずまるで猫の子を投げるような無造作さで甲板から操舵室へ降りる昇降口へと放り投げた。
 カーラアブルが脳天に響くほどの尻もちをついて呆然と声が出ない間に、甲板にいた仲間たちが彼の周りに走り寄ってきて彼を背後に護るように囲む。砲撃手、料理人、船匠、縫帆手など普段の仕事はさまざまだが、誰も怯えたり逃げ出そうという者はいない。
 そしてヴィーラは両足を開いて操舵室へ降りる場所を護るように立ちはだかると背の二本の剣を抜き払って、落ち滴る雨に目を細めながらメインマストの上を改めて見上げた。
 どう考えても物理的な剣で太刀打ちできる相手でもないが、だからといって武器も持たぬ無防備な状態で待ち受けたくない。わずかな望みがあるとすれば両方の剣に宿っている精霊だが、いまは静かなままだ。

 降りしきる雨と雷鳴の合間に、メインマストの上で光るモノが金属を引っかくような耳障りな音をたてたかと思うと、ポンッと弾けて晴れた真昼のような光を振りまいた。
 それに目を奪われていた一同は一瞬目がくらみ、誰もが手で光を避けるようにして顔を背ける。
 ほどなく戻ってきた視野は前よりもいっそう暗く感じられ、そして次々と誰かが海のほうを見ろと叫んだ。
 カーラアブルも尻もちをついたまま、自分を護るように並ぶ男たちの足の隙間から海を見ると、ほんのさっきまであれほど遠くにいた船影が薄暗い雨の中でもはっきりと見えるほどに近づいている。まだ視界は曖昧で、おまけに投げ飛ばされた衝撃なのか、頭がズキズキと痛んだ。
 左舷をこちらに向けており、とりあえず正面から突っ込んでくる角度ではない。すべての帆を張り悠然と波を越えてくる姿は、何気ない穏やかな日常で目にすればさぞや美しく立派に見えるだろうが、今はただ不気味である以外なにも感じられなかった。

 大きな波を横から受けて船が傾ぎ、また戻るのすらはっきりと見え、強い風にバタバタとはためく船旗も確認できそうなほど近い。昇降口のはしごにいたセフィードが、操舵手にむかって大声で舵を右に切るよう教え、今度はこちらの船が船底に波を受けて傾いた。
「なんなんだ、次から次と……少なくとも俺の追っ手じゃなさそうだが」
 カーラアブルを護るように立つ砲撃手のカスールが呟く。火薬ギルドに属していなければ持てぬ銃を腰に巻いたガンベルトに二丁下げている。砲撃手と言っても彼は大砲ではなく銃を得意としていた。剣のように細身で鞭のようにしなやかな体躯をしている男だ。
「カスール、相手が船なら攻撃できる。銃撃と砲撃の用意を!」
 ヴィーラの命令に「了解!」と短く返事をすると、砲撃手と見習いたちは素早く行動を起こそうとするのだが、船の揺れが単なる移動すら難しくさせている。それでも彼らは最大限の努力で右舷の大砲のそばへと辿り着き、砲弾の準備を始める。
 相手の船はこちらよりずっと大きいが、商船ならば火砲はないはずだ。もしそれを備えていて攻撃してくるならば、こちらに分はない。

 カーラアブルたちの船は多少の交易と略奪も目的になっているので、スピードが速く左右に二門ずつの火砲を搭載している。とはいうものの、略奪と戦いだけで生きているような船に適うはずもなく、武装した裕福な商船にも適わない。
「さっきの光といい、船のありえない速さといい、魔法が介在しているのは間違いないですが、何が目的でしょうね?」
 いつのまにかマジュヌーンが甲板へあがり、ヴィーラの傍らに立っていた。
「俺は人外の考えるようなことはわからん。魔法を使う人間の考えもわからん」
 ヴィーラがむっつりと答える。
 カーラアブルはセフィードに背後から腕をつかまれ、船倉へ降りるよう促された。確かにここにいては危険であるし何も彼にはできないが、それでも何が起こるか見ずにいられそうにもない。
 セフィードの叱責にしぶしぶ梯子をいくつか降りて、頭だけを出して漂流船のほうを伺う。
 すると、漂流船の船首の青白い灯火が一つともった。

「やはり誰かいるのか」
 ヴィーラの呟きが聞こえたかのように、次々と灯火がゆらめきだし、三本のマスト灯、スル(帆)の補助灯のすべてが点った。まるで灯りで装飾されたほどに数が多い。美しいといえば美しいだろうが、不気味さは増しただけだった。
 そしてヴィーラの炎の剣が赤く発光をはじめ、少し遅れて氷の剣も同様に蒼く輝きだした。あの船が何にせよ、主の敵であると判断したようだ。
 水夫たちがこの灯火をともしたのならば、どれほどの統率と一糸乱れぬ動きであることか。しかしそれを見ている人間に誰一人それを思ったものはいなかった。
「なあマジュヌーン、嫌なことを一つ言ってもいいか?」
 ヴィーラが不機嫌そうに漂流船をにらみつけたまま呟く。
「きっと私が言おうと思ってることと同じでしょうね」
「気が合うな……」
 ヴィーラが笑いを含んだ声で答えると、「砲撃準備完了!」の緊張した声が上がった。
「よし、目標はマストだ! 撃て!」
 剣を突き上げたヴィーラの咆哮に似た命令に砲撃の音が応える。

 カスールが改良した自慢の二連射砲の吐く煙と轟音が、雷鳴に負けじと響き、どちらの音かわからない衝撃が空気を震わせた。改良された大砲は発射の衝撃で下がらないが、人はいつも以上に条件の悪い甲板で踏みとどまるのが精一杯のようだ。
 誰もが漂流船のダメージを期待して目を離さないが、折れたマストも破れた帆も確認できない。これだけの近い距離と砲撃手たちの腕を考えればまずありえない結果だ。火砲には次の砲弾がが急いで込められている。
「あの船、やっぱり風向きと帆の向きが合ってない。なのに凄い速さだ」
 両耳を手でふさいでつぶやいたカーラアブルの声は、独り言にしては大きすぎ、まだ避難してないのかという咎めるヴィーラの視線に捕まったのだが、ヴィーラから出てきた言葉は「気付いたか」という言葉だった。
「我々がいる場所と違う風が吹いているなら別ですけどね」
 マジュヌーンも同意するように頷く。
「そしてこちらの攻撃の効果が思うようにあがっておらんじゃろうて」
 カーラアブルの背後から師マギの声がして、振り返って梯子を譲った。船の揺れと砲撃音がつかのまの休息すら奪ったのだろう。師マギは冴えない顔色のままだったが、眼差しは力強さが戻っていた。

 風雨は少しも弱まらず、むしろ今がピークかと思える激しさだ。稲妻が海に落ちるのも見える。師マギは大儀そうに梯子を上りきって最後はマジュヌーンの手を借りて甲板へと出た。その老人の体にも雨は容赦なく叩きつける。
 ヴィーラが砲撃やめの命令を出し、騒々しい雷雨と波音だけが妙に静けさを感じさせるのが不思議だ。
「カーラが最初に見つけた蒼く光る海が、いまあそこで船の灯りになっておる」
「灯りに? いったいあれはなんでしょうか」
 マジュヌーンが師マギに手を貸して、不安定に揺れる甲板での支えになる。
「おそらく海で死んだか、あるいはこちらを狙っているのならあの船に同じように殺された人の魂じゃろう。ひとつひとつは邪悪ではないが、邪悪のために集められた哀れな存在よ。連中は波間に漂い、船に集められ、さらなる魂を集めるために使われる。
 そして弱い魂を吸収し強くなるが二度と転生の輪には戻れぬのじゃ」
「何のために? 誰が?」
「誰が、が人ならば外道の魔術師。何のために、人であれ人外であれ力を得るために。魂を反属性の接着として使うのは禁忌の技で、恐ろしく強力じゃ。そして我らでは太刀打ちできん」
「船を沈めても無駄でしょうか?」
「無理じゃろうな。あれも幻のようなものだ。おそらくあの燐光の数の殆どが、かつてあの船で暮らしていたのじゃろう。その連中が作り出している幻影であり、邪悪なものだ。そしてその自ら作り出している船に囚われておる」
 師マギは「哀れよのう」と付け加えて、嘆息した。

【続】


あとがき▼


 またお久しぶりな更新に^^; 
 資料集めで海賊やら帆船のサイトをぐるぐるみてまわってるのですが、これはひょっとして海洋小説を読むほうが頭に入るんじゃないかという思いつきで、ホーンブロワーシリーズの一巻を買ってみましたw
 面白そうです! 昔のハヤカワなので字が小さくてみっちりです!

 しかしまた変なわき道に行ってる気がします^^;
 いえいえ楽しければいいのです!(笑)

 こうやってまた本が増えていくのですがね;


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~ Comment ~

NoTitle

ううっ、ついにカーラを守護すべく皆が一段となるシーンに感動を覚えました。
カーラよ。ただのいたずら小僧だと思っていたけれど、やっぱり守護されるべき人間だったんだね。よかったね、と、頷く私。

もう早く先が読みたくて仕方ありません!
どうなるんだろう?

のえるさま

コメントありがとうございます。
なんかアホ息子の母のような気持ちで読んでくれているのですね(笑)

この話はオディール到着までになっていますが、あと少しお付き合いください。
やっぱ船舶関係の知識と単語が枷になってます^^;
ガチガチリアルにする必要性は考えてませんが、ファンタジーといえどそこそこ「っぽい」ものが必要なので…。

それでこれかとは言わないお約束ww
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