FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←雑記:1次創作のあれこれ →雑記:ファンタジー話1
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png キャラクター
総もくじ  3kaku_s_L.png 読みきり短編
総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト
総もくじ  3kaku_s_L.png 雑記カテゴリ
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手お返事
【雑記:1次創作のあれこれ】へ  【雑記:ファンタジー話1】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「読みきり短編」
【30のお題】シリーズ

1.居場所もしくは存在意義(30のお題)-7

 ←雑記:1次創作のあれこれ →雑記:ファンタジー話1

 操舵室に戻ると、窓から見える空はすでに晴れておらず、風がひどくなっていた。古い船体の木材が軋む音が、いつもより大きく聞こえる。ヴィーラは甲板で外を確かめたいようで、そのまま出て行った。
 左手の彼方には半島の輪郭がうっすらと見えるが、半島はどこをぐるりと廻っても切り立った崖で、とても上陸など望めない。崖を上がれば鬱蒼と茂った樹海のような森が半島のむこう側の海まで続く。そしてそこに住むのは人に対して閉鎖的で友好的とは言えない美しいエルフたちだ。
 もちろん船を寄せる場所もないが、万一上陸できたところで出口のない森を彷徨い続けて、未知の生き物に襲われ命を落とす可能性もある場所だった。地形的に浅い湾のようになっている部分ならば、嵐の前の波の荒れ方も多少ましになる。それがカーラアブルたちが望んだことだった。
 それでも波の上下に加え、風で左右に煽られるので何かに掴まっていないと心もとない。収まっていた胃の不機嫌な反乱が再開し、カーラアブルは気を紛らわせるものはないかと外に目をやった。
 何か見つけた先ほどの位置から、かなり大陸よりに進路を取れたようだ。時辰儀を見ると一刻ほど過ぎていた。もっと船倉にいた気がするし、同時にそんなに時間が経っていたのかとも思える。
 蒼く光っていたものからは距離を取れたようだが、雨雲には確実に近づき遠雷とともに大きな雨粒が甲板を叩き出す。波が荒れているとはいえ、命に関わるようなものではないので、幾人かは恵みの雨とばかり全身に浴びて大笑いしていた。
 操舵室にはおそらく詠唱で疲れたのであろう師マギはおらず、対照的に疲れも見えぬマジュヌーンはセフィードと何やら話し込んでいる。
 カーラアブルは窓越しにテレスコープで自分たちがいた距離をとった方角を見るが、すでに雨と雲で視界が悪く何も特別なものは見えなかった。
「私ごときの才では、ヴィーラの剣から間接的に感じる『嫌なもの』程度しかわからないのですが、彼の剣は邪悪な属性のものではない。そこから考えれば、オディールを護る水妖たちも旧五神に仕えるものならば脅威にはなりえても邪悪ではない。そうすると、残りは?」
 マジュヌーンが顎に指を添えて頭を傾ぐ。見目の良い彼は着飾らせれば貴族のサロンに上がれそうな吟遊詩人に見えそうだ。実際、古語で歌えるものが高級な詩人とされているのだから、先ほどのように古語の呪文をすらすらと唱えられるならば、詩などたやすいことだろう。
「俺の頭じゃ冥界のものか、転生から外れた悪しきリュガート(霊)ぐらいしか思いつきませんね」
 セフィードが自信なさげに答えたところで、カーラアブルが「さっき警鐘が鳴ったけど、何かあったのか?」と割り込んだ。二人の目が初めて、船倉から戻ってきたカーラアブルを捉えた。
「警鐘?」
「うん、3回鳴った。前方に注意せよ」
「ああ、確かに鳴りましたね。岩礁でもありましたか?」
 マジュヌーンもカーラアブルの言葉に同意するように頷いた。
「かなり前方に船影が見えて、雨雲と見通しが悪いのでお互いの位置を知らせるために鳴らしたが、相手からは返ってこなかったし、しばらくしたら視界から消えた」
 彼らに背をむける形で舵輪を握っていた操舵長のアルナが、肩越しに振り返って経緯を説明した。
 と、その時、甲板が急に騒がしくなり行きかう足音がうるさく響く。カーラアブルは素早く反応して身を翻すと、甲板へ駆け上がった。
 激しさを増す雨の中、カーラアブルも瞬時にずぶ濡れになる。
 雨の恵みを全身で受けて喜んでいた連中が、一様に同じ方向を見上げており、その視線をたどってカーラアブルもそちらを見ると、船影が見えた。これが先ほどアルナ操舵長が言っていた船だろうか。
 重くどんよりと下がった灰色の空の下、三本マストの大きな船のシルエットが見える。時折ひらめく雷光で、立派な商船であることが伺えた。帆を張ったままだが、現状では船尾からの風なので船体がそれを拾う向きになっていない。
 波に翻弄され、左右に大きく傾ぎ、天候のせいというには危うすぎるほど不安定だ。メインシュラウド(マストに登る縄梯子)に上ってヴィーラが少し高い位置からテレスコープで海上を見ている。
「何かあったのだろうか? さきほども一度、見張りが船影を見かけたがすぐいなくなっていた。どうも進路が定まってない」
 ヴィーラは覗いていた携帯用のテレスコープを、傍らに登って来たカーラアブルに渡して呟く。
「うーん、遠くてよく見えないせいもあるし、雷雨で中にいるのかもしれないけど、人の動く気配がまったく見えない。普通の灯火も航海灯も」
 そう言ってカーラアブルは自分たちの乗っている船のマスト灯を見上げた。船は右舷、左舷、船尾とマストに航海灯を点け、周囲の船の航海士はその燈火を見て船の大きさや進んでいる方向を判断するのだが、彼方に見える船にはそれが一つも点いていない。これでは悪天候や夜の闇では衝突してくれと言うようなものだ。
「事故か病気か。流行り病なら近づきたくないものだが、見捨てられた漂流船なら不用品をいただきに行くのも悪くはない。立派な船だ」
 ヴィーラが腕を組んで船影を見ながら呟くと、操舵室から顔を出したセフィードとマジュヌーンが同時に「交易船?」と下から尋ねた。二人とも顔を叩く雨に顔をしかめて、目の上に手をかざしている。
「喫水が深そうだから、何にしても荷物は満載のままじゃないかな。でもそうなら、どうして誰も略奪しなかったんだろう」
 カーラアブルはテレスコープをもう一度覗いて答えた。
「マジュヌーン的には、あれがどういうモノかわからないわけ?」
「病気で死んだ人の霊が漂ってますよ、とか?」
「そうそう。それがわかったら、死体がゴロゴロとかわかるじゃないか」
 カーラアブルは振り返るとにっこり笑ったが、冷たい目で呆れた表情のマジュヌーンの顔を見て笑顔が消えた。
「カーラにはネクロマンサー(死霊使い)とシャーマン(呪術師)と魔法使いの違いを一度ゆっくり説明して頂きましょう」
「どれも似たようなモンだろ?」
「そうですね。音楽家に肖像画を依頼する程度には似ていますね」
「オレはそこまでバカじゃないぞ」
 セフィードは二人のやり取りを笑いながら聞いていたが、雨を避けるのは無駄だと知りながらもヴィーラを見上げ、その瞬間に表情をこわばらせて叫んだ。

【つづく】
関連記事



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 読みきり短編
総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト
総もくじ 3kaku_s_L.png 雑記カテゴリ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png キャラクター
総もくじ  3kaku_s_L.png 読みきり短編
総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト
総もくじ  3kaku_s_L.png 雑記カテゴリ
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手お返事
【雑記:1次創作のあれこれ】へ  【雑記:ファンタジー話1】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【雑記:1次創作のあれこれ】へ
  • 【雑記:ファンタジー話1】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。