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「読みきり短編」
【30のお題】シリーズ

1.居場所もしくは存在意義(30のお題)-6

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 外の景色が見えないぶん、揺れの気持ち悪さが半端ではない。横揺れはともかく、上下は胃がせりあがる気分だ。さらに振り香炉から立ち上る香りが、拍車をかける。どんなにありがたい良い香りでも、薄暗く揺れのひどい船倉ではあまり嗅ぎたくない。
 魔石が置いてある船倉は船のなかでも一番最下層で、もちろん暗く空気もよどんでおり、狭い。木箱に入ったいろんな物が所狭しと積まれており、さらに湿気が強い。とくに船の老朽化が進んでいるので、ところどころ水溜りがあるぐらいだ。
 先ほどあれほど具合の悪そうだった師マギは、意外にも杖を片手にしっかりと立っており、マジュヌーンが魔石を台座に乗せて何かを調べている様子を見ていた。台座といっても本一冊分ぐらいの石版にくぼみがあるだけで、それが無造作に床に置いてある。これに何がしかの呪術が施してあるにしろ、カーラアブルにはご大層なものには見えなかった。
 この薄暗い揺れのなかで細かいものを見るなど、カーラアブルは絶対ごめんこうむるが、当のマジュヌーンは快適な桟橋で本でも読むような何気なさだ。やはり人間離れしているのは確かだと改めて思った。
 ヴィーラは壁の鉤釘に振り香炉をつるし、腕を組んで壁にもたれ二人の様子を見ている。
「やはり土属性ですね。ヴィーラの火の剣と相性が良い」
 マジュヌーンはそういうと肩越しにヴィーラを振り返った。カーラアブルもつられてヴィーラの背に目をやる。
 彼は湾曲した二本の剣を左右の手でふるうが、右が氷の、左が炎の精霊の加護を受けており、その力を発するときは刀身がそれぞれの属性に相応しい輝きを放つ。しかしそれも今は静かにヴィーラの背の鞘に収まり、普通の剣となんら変わって見える部分はない。
 マジュヌーンが台座に置いたことで、魔石は命じられることもなくその力で船を動かし始めており、波が今までとは違う方向から船を揺らしているのを感じられる。
「どうして土と火が相性いいんだ? 土なら水とかじゃないのか」
 カーラアブルが尋ねると、師マギは深々とため息をついて「お前は何度属性を勉強したら覚えるんじゃ」と呟いた。
「10元素とか相克とかややこしいんだもん」
「補習はあとじゃ。ちと黙っておれ」
 師マギは不出来な弟子を一瞥すると、杖を顔の正面で握り締めて目を閉じ、低い声で古語の詠唱を始めた。すぐにマジュヌーンの柔らかな声が唱和する。大げさな身振りは何もない。ただ一言一言を丁寧に綴っていることはわかる。
 声の高低や言葉の強弱で、祈りの一節のように聞こえるが、カーラアブルには意味のかけらも何一つわからない。しかし不思議にどこか懐かしいような、単純に旋律が美しいと感じるような気持ちになる。 期待していたような魔石が輝くようなことも振動するようなこともなかったが、ふと虫の羽音のようなものが耳の奥で聞こえていることに気付いた。
 不快とは言わないが、なんとも落ち着かない。痒いわけではないのだがそう感じるのに似ている。自分だけの耳鳴りだろうかと、指を入れてグリグリかきまわしてみたが、何も変わらなかった。

 船鐘の音が異世界から響くように一つ。間をおいて三つ。
 前方のものに注意せよ、だ。
 得体の知れない蒼い光が近づいているのだろうか。
 光といえば、部屋の暗さが少しマシになった気がすると思い、ヴィーラを見ると彼の背負っている剣の一本が薄赤い光を帯びていることに気付いた。ヴィーラと目が合うと、知っている、というように頷き返してくる。
 だんだん羽音の耳鳴りが高い音に変わり、カーラアブルはそれが何か旋律に似ているような気がした。
 師マギたちの唱える古語の静かな低い声と、合わせるような羽音に似た響き。時間と空間の感覚が麻痺するようで、眩暈がする。足元に確たるものがなくなり、上下も左右も曖昧だ。

 いや眩暈がするのは、船酔いのせいか?

 それがどれほど続いたのかわからないが、いつしか師マギは詠唱を終えており、杖に寄りかかり眉間に深い皺を寄せたまま魔石を凝視している。マジュヌーンの静かな詠唱は続き、それにまといつく羽音はいまや美しい鳥の囀りに似ており、ヴィーラの剣はいっそう輝きを増していた。刀身がまるで炎のようなルビーになって、そのままの色を放っているようだ。だが熱はないようで、ヴィーラは平然としている。
 そしてカーラアブルは我に返ったように、はっきりと力強く波をすべっていく船を足元に感じ、同時に空中に放り出されたような感覚も消えた。
 いまや波に翻弄されているだけではない。まるで百人の漕ぎ手に運ばれるように波の谷間を滑らかに進んでいる。
 そして一番驚いたのは、ともすれば胃が反乱を起こしそうな気配がすっかり影を潜めていることだった。
 単純に言えば、気分がいい。
「ラハブは、あの光がとても嫌だと言ってますね」
 マジュヌーンも詠唱を終えて額に落ちた髪をかきあげ、緊張を解いた様に息を吐いた。
「ラハブって?」
「俺の剣だ」
 ヴィーラが親指で自分の背後の赤い光を放つ剣を指す。
「そんな名前なのか。剣がなんか言うわけ?」
 カーラアブルは目を丸くして何の冗談だろうと問い返した。
「話すわけではないですよ。そういう意思を感じるに近いですかね。おかげで力を貸してもらえて随分と速度が上がりました。魔石を壊すほど酷使することもなくてよかった。あとはよろしく、ヴィーラ」
 マジュヌーンは少し微笑むと、師マギに手を貸して船倉を出て行く。
「え、終わり? ヴィーラもそういうのわかるのか?」
 カーラアブルは出て行く二人の背と、あいかわらず壁にもたれたままのヴィーラを交互に見る。
「いいや、俺はまったくわからん」
「持ち主なのに?」
「残念ながら」
 平然と答えるヴィーラに、カーラアブルは少し身を寄せて小声で囁いた。
「マジュヌーンって、やっぱり魔族の血が流れてるとか?」
 ヴィーラは乾いた笑い声を一つ上げると「またもや残念ながら、人間だ。オディールに行けばあんな奴はゴロゴロいるぞ」と言った。
「犬や猫が好きな奴らなら、彼らが喜んでいるとか嫌がっているとかわかるだろう? あれと大差ない」
 ヴィーラのあまりにも味気ない説明に、カーラアブルが思わず吹き出す。彼にかかれば魔術も精霊も神秘ではないのだろう。
「例えば、何でもいい。お前がどう努力しても歯が立たない奴がいるとしよう。そうだな、芸術的なものがわかりやすいか。絵とか音楽とか。お前は相手の何倍も練習をしたのに上手くいかないが、相手は息をするように簡単にやってのける。お前が何年も研究して発見した技法を、相手は何も知らないのにやってのける。
 世間じゃそういうのをなんていう?」
「神が与えたもうた才?」
 カーラアブルは難しいことを聞かれているかのように眉を寄せ、コーンフラワーの青い目でヴィーラを見上げた。
「マジュヌーンの魔法に関する才能もそういったものだ。俺や師マギにはない。師マギなど何年も研究して練習を重ねても、詠唱することはできても、精霊などの意思を感じることはできん。しかもマジュヌーンのものはその中でもごく弱いもので、とてもじゃないが魔導師などにはなれないレベルだ」
「オレからみたら、ただひたすら凄いけど! じぃさんもすげぇ!」
「自分が持たないものを持つものは、大抵そう見えるものさ」
 ヴィーラが苦笑交じりに幼い感嘆に応じる。
「オレもそういう才能あったらいいのになぁ。ある日突然目覚めたりしないのかな。ヴィーラの剣を両手で使えるってのもカッコイイし凄いよなぁ」
 そこまで憧れを一気に呟いて、カーラアブルはふと疑問を抱いた。
「じゃあどうしてヴィーラはそんな魔法の剣を使ってるんだ? どうせなら意思疎通できる者が使ったほうがいいんだろ?」
 カーラアブルの問いに、ヴィーラが無言で肩をすくめて見せたと同時に、美しい鳥の囀りのような音は沈黙し輝く刀身も嘘のように消え去った。静かで暗い船倉が戻ってくる。伽羅の香の香りはもはや不快ではない。
「終わったようだ。その話はまた今度な。香炉はそのままにして上に戻ろう、カーラ」
 肩に軽く手を置いて出ようと促すと、カーラアブルも素直に頷いて先に階段を上がり始めた。
「最初耳障りだったけど、小鳥みたいな音を出すんだね、ヴィーラの剣」
「え? 小鳥?」
 怪訝なヴィーラの声が背後からする。
「小鳥、じゃないのかな。笛? 何だろう? 最初は蜂の羽音みたいで耳の奥が痒くて、ヴィーラがよく平気だなと思ったんだけど」
 カーラアブルが笑いながら振り返ると、珍しくヴィーラの瞠目する表情とぶつかった。
 呼吸二つぶんの沈黙のあと
「カーラ、もう一度言うが、俺には何もわからないし、聞こえない」
 ゆっくりと噛んで言い聞かせるようなヴィーラの言葉に、今度はカーラアブルが歓喜するような困惑するような、そしてどこか失望するような表情をない交ぜにして、最後には黙り込んだ。
 その意味を確かめるまでもない。二人はそれ以上何も言わず、階段を上がり続けた。




あとがき▼

2週間ほどあきました。資料到着を待ってたり、落書きしたり、小説登場人物の絵をまとめていたり、サーバーいじってたりと散漫に過ごしておりました^^;

前回の話を忘れないように(主に自分がw)、週に一度ぐらいは続きを掲載したいものです(笑)
もうしばらくお付き合いくださいm(__)m


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