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「読みきり短編」
【30のお題】シリーズ

1.居場所もしくは存在意義(30のお題)-3

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 誰もがカタカタを音を立てて回り続けているターゲットを見つめている。そして何人かがそばへ走りよった。ヴィーラですら身を乗り出している。 会計係のヒサーブがゴクリと唾を飲み込む音がした。
「え、まさか……」
「5だな!?」
 カーラアブルが文字通り飛び跳ねて拳を空に突き上げ、奇声を発する。それと共に彼に賭けていた仲間たちも喜びの雄叫びを上げた。
「いや、まて、皆こっちに来い!」
 ターゲットのそばにいた砲撃手がそれを遮って手招きしたので、いまさら何ごとかとぞろぞろと集まる。喜びに水をさされたようで「なんだぁ?」とカーラアブルは不機嫌そうに砲撃手のもとに行った。
「これ、どっちだ?」
 船員の一人の呟きに、全員の視線が集まる。
 カーラアブルの投げたナイフは、お世辞にもまっすぐとはいえない線の上に突き立っている。線の左は指定された5で右は10だ。もしこれが10と判定されれば確実に負けになる。問題は、その線が上に伸びた所では左に、下に伸びたところには右に大きく蛇行しており、どちらを優先して見るかで単なる線の上でも決着が違ってくる。
 たちまちその場は5だ10だと主張しあう喧騒に包まれた。
「誰だよ、5の隣に10なんか書いた奴は!」
「このぐにゃぐにゃした線が問題なんだろ」
「どう見ても5だ! カーラの勝ちだ!」
「いいや、このナイフのケツの傾きは10だな!」
「もう一回投げればいいじゃないか」
「それはダメです!」
 会計係の拒否する甲高い叫びに、一瞬その場が静まり返った。注目を浴びてヒサーブは咳払いを一つする。
「いえ、賭けで決着がつかないからともう一回を繰り返してはダメです。勝ち逃げなんて言葉もナシ。それはこの船での約束なんですから」「じゃあどうやって決着つけるんだ?」
「別の勝負をやったらどうだ?」
「オレの勝ちだろ!」
 カーラアブルの主張で、また蜂の巣をつついたような喧騒になる。
 とうとうそれぞれの主張で胸倉をつかみ始めたとき、ヴィーラが「うるさいっ!」と一喝し、手振りでクールダウンするように皆をたしなめた。さすがに剣士の声は、槍のように騒ぎをなぎ払う。
「もう一人の投げた張本人はどう思うんだ?」
 セフィードは面白がってこの騒ぎを見ていた。正直、カーラアブルの中途半端な強運にはいつも驚かされる。
 過去にも拾った金券クジが当選番号だったので、喜び勇んで交換に行こうとしたら交換期日が一日前だったとか、船で全員が食中毒でダウンしたときに一人ぴんぴんしていたのに、皆が元気になった途端に南国の熱病で2週間寝込んだとか、極めつけは海の魔物に船が襲われたとき、カーラアブルが投げた銛が急所に命中して退けたものの、その魔物が放った断末魔の悲鳴のせいで全員1週間は眩暈に悩まされて起き上がれなかったことだ。
 悲しいかないつも彼の強運は中途半端なのだ。どこか残念に終わる。
 まるで何かが強運を故意に引き止めているように。
 セフィード思いがけずヴィーラに意見を求められて顔を引き締めた。
「ジャッジを。この船には法がある」
「だな」
 ヴィーラが同意するように頷く。
「でもジャッジを頼むと全体の三分の一は持ってかれるぞ!」
 カーラアブルはぶつぶつといいながらも同意した。ジャッジに払われた金は、船全体の資金に繰り込まれるので住人である以上は誰もが声高に不満も言えない。
「じゃあ師マギをお呼びしろ。丁重にな」
 ヴィーラの言葉に頷いて、砲撃手が船倉へと降りていく。
「絶対あとからすげぇお小言食らうぞ……」
 カーラアブルはすでに勝ち負けよりもそのあとに来る老人の叱責のほうが気になるようだ。
「それは俺もだよ。なんで止めなかったのかってね。率先して参加したのではいいわけどころじゃない」
 セフィードもやれやれと肩をすくめた。本来ならば、海図とアストロラーベを睨んで、師マギから出された課題に答えを見つけてなければならないのだ。
 ほどなくして、悪態をつきながら褪せた黒のガウンを着た老人が砲撃手に連れられて甲板に上がってきた。手にしている背丈ほどある杖の先には竜の手で紅玉が握られており、白く長く伸びた髪と髭と相まって怪しい魔術に長けた導師のようだ。
「また貴様らはくだらん賭け事でワシを呼ぶのかっ!」
 老人とは思えぬ雷鳴のような声で怒鳴り、鋭い眼光で甲板の顔ぶれを睨む。
「お手を煩わせることになって申し訳ない、マギ」
 ヴィーラが丁重に言葉を選んで、頭を下げた。
「マハヴィルもいつまでたってもクソガキみたいな遊びをしておるんじゃない! まったくいつになったらこの船は秩序というものが生まれるんじゃ……」
 ヴィーラは通名ではなく本名で怒られ、さすがに苦笑を禁じえない様子だが殊勝にも視線を下に落としたまま黙している。
「それにセフィード! お前もこんなことをやってる暇があるとは随分優秀な航海士になっと見えるのう」
「言葉もございません、師マギよ」
 セフィードも大人しく頭を下げる。そんな二人の老人を敬う態度とは違って、カーラアブルが口を尖らせる。
「いいからじーさん、とっとと白黒つけてくれよ。まあオレの勝ちってのはわかってるけどさ」
 ヴィーラから無言で後頭部を叩かれ、カーラアブルは「ってぇ!」と叫んで悪態を止めた。
 老人は問題のターゲットをじろりと見ると、「まったくくだらん!」と悪態をつき
「ジャッジの定めにより三分の一を船に、貨幣は帳簿の勝敗により倍率ではなく個々に分けよ。物品を出したものはそれを返却とし、貨幣の分配は行わぬ。さらにカーラアブルの出した貨幣は没収。以上!」
「おいおい、じーさん、それじゃあ俺だけの損じゃないか!」
 また無言でヴィーラの手が後頭部を叩く。カーラアブルは不満をこめた視線でヴィーラを睨み上げ、そのまま老人に視線を移した。
「お前が賭けを扇動しこの結果を招いたのじゃろうが。ジャッジにゆだねた以上、異論は認められん」
「あんな真ん中に刺さるなんて思ってなかったからだよ! 勝つか負けるかだと思ってたさ!」
「可能性を考えず、それに対処する方法を用意しておかなかったお前が浅はかなだけじゃ。あらかじめ、線の上に刺さった場合のルールを考えておけばよかっただけのこと。
 まったくもって、短慮の浅慮じゃ」
 老人はそう呟くと、仕事は終わったとばかりにくるりときびすを返した。その背中にセフィードが
「あの、師マギよ、俺の出した金はどうなります? 最後のカーラとの勝負に賭けた金ですが……勝ったわけでも負けたわけでもないとしたら」
 と尋ねた。
「お前も没収じゃ。職務怠慢の罰金じゃ! 今夜の月の出までにきちんと計算をだしてこい」
「肝に銘じます」
 セフィードは苦笑しながら頭を下げ、老人の退場を見送った。
 その後は会計係のヒサーブの記録と計算の元に金が返却され、一部のものは勝ったゆえに多少の、また相手が物品を賭けていた者は自分の金だけを受け取り、そしてすっかり低くなったテンションでおのおのの仕事へと戻っていった。

【続】



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